大使不在 在日韓国大使館の大きな穴【東京支局長コラム】

投稿者: | 2025年8月1日

 在日韓国大使館の公使は、不在の大使の代わりに日本の閣僚と会談し、意見をやりとりできるだろうか。7月25日に首相官邸の幹部と夕食を共にする席で尋ねた。「容易ではないこと」と彼は答えた。他の席で自民党の国会議員も、同じ質問に「大使ではない公使が有力政治家と単独で会うのは難しいだろう」と語った。相手の級を重視する日本の慣行からすると当然のことだ。韓国を代表する全権を付与された駐日特命全権大使と公使は別なのだから、日本をとがめる話でもない。

 今、日本政界はこれまでなかった大混乱に直面している。自民党の参院選惨敗と石破茂首相の辞任を巡る問題のせいだ。7月23日、石破首相は取材陣の前で「引き続き総理の職を遂行したい」と発言したが、翌日の読売新聞は政府・与党幹部の話を複数引用し、1面トップ記事で「石破首相が退陣する」と報じたほどだ。本人の公式発言よりも匿名の周辺人物の話を引用する非常識なことが起きている状況だ。「女の安倍」といわれる高市早苗・元経済安全保障相が次期首相候補に浮上し、ようやく正常化した韓日関係の時計を逆戻りさせる危険性も高まっている。

 日本の政局がこのように「カオス」と化しているのに、最前線で情報収集と韓日関係の今後の動向について知恵を絞るべき韓国大使は、東京にいない。韓国政府の帰国指示に基づき、朴喆熙(パク・チョルヒ)駐日大使は7月14日に帰国した。朴大使は、石破首相や林芳正官房長官はもちろん石破退陣論を主導する旧安部派とも近い。日本情勢の把握が重要かつ難しい今の時点で、石破首相と反石破陣営とを行き来しつつ本国へ正確に報告すべき人物が消えたのだ。

 新政権が前政権の人物を交代させるのをとがめることはできない。だが、予告された「日本政局の7月の変」を前に、後任の大使もなしに現大使を帰国させる措置は、国益にかなったものだろうか。日本政界では、1カ月前から「自民党惨敗とその後の石破退陣シナリオ」が広まっていた。

 関税問題もそうだ。7月26日に東京の早稲田大学で、在日韓国大使館が韓国経済学会・日本経済学会と共に開催した「トランプ米政権の関税政策に対する韓日が取るべき対応とそのための連携」フォーラムは、関税率15%で妥結した日本から一つでも学ぶべき場だった。ところが日本側から出席したのは経済学者だけで、経済部局の官僚の姿はなかった。韓国大使が駆け付けていれば違ったかもしれない。韓国大使の空席は、ソウルの人事権者が考えているより大きかった。

 李在明(イ・ジェミョン)大統領は、当選後の最初の国務会議(閣議に相当)で、前政権の閣僚に「われわれは皆、国民から委任された業務を行う代理人」だとし「少し居心地が悪いだろうが、公職にある間くらいはそれぞれ最善を尽くしてもらえればと思う」と述べた。少なくとも駐日大使には当てはまらなかった発言だ。この穴と損失をどうするのだろうか。

成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長

2025/08/01 10:02
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2025/07/30/2025073080104.html

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