韓日首脳会談の成績表と残された課題【特派員コラム】

投稿者: | 2025年8月29日

 李在明(イ・ジェミョン)大統領が28日、3泊6日間の緊迫した初の訪日および訪米日程を終えて帰国した。

 初の2国間会談の訪問先として米国ではなく日本を選んだのは、様々な面で良い戦略だったと思われる。日本では当初、保守メディアだけでなく政界、政府内部でも、多くの人が李大統領に「反日」というレッテルを貼って斜に構えていた。しかし、李大統領が「日本と最初の首脳会談」を実行したうえ、日本軍「慰安婦」被害者と強制動員の問題について「国家間の約束を覆すのは望ましくない」という考えを明らかにしたことで、強硬な声が弱まったのは確かだ。

 李大統領の友好的な姿勢に、石破茂首相は首脳会談で両国の国旗が形象化されているバッジをつけた。駐日韓国大使館が6月の「韓日国交正常化60周年記念式」の際に石破首相に直接渡したもので、尊重し合いつつ協力しようという意味が込められていた。普段つけていた衆議院議員バッジ、大阪・関西万博のバッジ、北朝鮮拉致被害者を象徴する「青いリボン」バッジにこれを加え、韓日関係を強化する考えを強く示した。石破首相は「(韓国大統領の)最初の2国間訪問先が日本となるのは、国交正常化後、今回が初めてのことであり、非常に良い形で『シャトル外交』を実践できることは喜ばしい」とも述べた。

 李大統領にとって今回の韓日首脳会談は、米国のトランプ大統領との会談に比べ、緊張感や重要度の面で前哨(ぜんしょう)戦程度のものだったのかもしれない。しかし、今後5年間の対日関係の最初のボタンをかけたという点で、意味は大きい。両首脳も無理をしたり、遅れを取ったりすることなく、慎重に半歩だけ踏み出したようだった。韓日の首脳が17年ぶりに発表した共同文書は「韓日両国が、未来志向的かつ互恵的な共通利益のため、共に協力していかなければならない」という「模範答案」だった。シャトル外交の早期再開、北朝鮮の非核化、安保・経済のような大層な問題だけでなく、少子高齢化、首都圏集中、人工知能(AI)のような「モッコサニズム」(食べていく+イズム)を共に解決しようという考えも共有した。1998年の「金大中(キム・デジュン)-小渕韓日共同宣言」を継承し発展させる新たな共同宣言によって、韓日関係を改めて飛躍させる可能性も開いた。

 結果的に、双方ともまずまずの成績を収めた。李大統領は安定的な韓日関係へのステップとするとともに、これを韓米首脳会談でも活用して「トランプ大統領が韓米日協力を非常に重視しているため…事前に日本と会って大統領の心配する問題をすべてあらかじめ整理した」という発言で好意的な反応を引き出した。石破首相は自民党内の強硬派の「石破おろし」の視線を外交分野へと分散させ、ひとまず一息ついた。ちょうど首脳会談直後には支持率も上昇した。

 だが、短い「和解ムード」だけで韓日間に横たわる長年の課題がなくなるわけではない。直ちに韓国の市民団体が「2015年の韓日(「慰安婦」)合意の際に、『日本に痛めつけられた韓国国民を永遠に地中に埋めてしまおうとするもの』と強く批判した李大統領だというのは確かか」と反発している。政府レベルでも、昨年は分裂開催となった日帝強占期の佐渡鉱山の朝鮮人強制動員犠牲者の追悼式のような、対立要素を抱える事案が山積している。李大統領は日本を離れる際、専用機の中で「こうした問題に対する指摘と批判は覚悟している」と述べた。李在明政権の「実用主義」は歴史と懸案を分離するという「ツートラック戦略」においても成果をあげられるのか。見守りたい。

2025/08/28 19:11
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/54089.html

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