その後中国は韓国より優秀な生産能力と安い人件費にともなう価格競争力を保有、汎用製品生産で優位を占めた。中国はエチレンを2023年に5174万トン生産したが、これは2020年の生産量より60%ほど多く、2023年の韓国のエチレン生産能力1280万トンの4倍に達する数字だ。それが供給過剰と価格下落をあおった。麗川NCCとロッテケミカルなど大企業を含む韓国の石油化学業界が輸出市場で苦戦する背景だ。
韓国石油化学協会によると韓国の石油化学製品輸出で対中輸出が占める割合は2010年の47.8%から2023年には37.3%に縮んだ。これにより韓国のNCC稼動率が2021年の93.1%から2022年に81.7%、2023年に74.0%と落ち込むほど仕事が減った状況だ。産業研究院のチョ・ヨンウォン研究委員は「最近の中国の景気低迷で石油化学製品価格下落傾向が深まる悪循環構造が形成された」と分析した。ここに中東の加勢が追い打ちをかけた。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェートなど中東諸国は産油国のため、石油化学産業で原料価格競争力で優位を占めることができる。ところがこれらの国が自国の産業多角化に向け相次いで石油化学産業への進出と高強度投資に出て供給過剰を悪化させている。
これとともに世界的な原油安の余波まで悪影響を及ぼし、産業資源部は先月の石油化学製品輸出単価が前年同期より12.6%下落したと集計した。深刻な収益性悪化も相変わらずだ。LG化学、ロッテケミカル、ハンファソリューション、錦湖(クムホ)石油化学の韓国石油化学大手4社の営業損失総額(石油化学部門基準)は昨年上半期の700億ウォンから今年上半期は4762億ウォンで1年で7倍に増えた。韓国政府はこうした状況悪化をこれ以上放置はできないと判断し、20日に韓国の石油化学業界の再跳躍を目標に主要石油化学企業10社と事業再編に対する自律協約を結んだ。最大370万トン規模のNCC縮小などを目標に業界に自律的な事業構造調整計画をまとめ、年末までに政府に提出するようにした。
具潤哲(ク・ユンチョル)副首相兼企画財政部長官は「業界が骨を削る覚悟で事業再編に出れば政府も最善を尽くして後押しする」と強調した。一部企業は自律構造調整の歩みを始めた。業界によるとLG化学は最近麗水産業団地と忠清南道(チュンチョンナムド)の大山(テサン)工場の従業員を対象に希望退職の意向を確認中だ。各企業は設備売却や企業同士の統合作業も議論中だという。業界関係者は「韓国の石油化学業界は韓国の輸出で7~8%台の割合を占めるほど重要で、衰退する地域経済保護のためにも守るべき分野。具体的な事業再編方向をまとめている」と話す。
◇麗川NCC、過去には「石油化学界のサムスン」とも
ただ企業の自律性に頼る民間主導方式では限界があるという指摘も出る。財界関係者は「米国の相互関税など対外悪材料追加で需要鈍化持続が避けられない状況で、目前の利害関係がかかった業界の自己救済策は実効的になるのが難しい。企業は大きな枠組みで戦略的に再編できず、山積する規制も多いため政府主導で着手する方が望ましい」と話した。彼は麗川NCCが大株主間の溝から迅速な意志決定が遅れた点を事例に挙げた。だが政府は当初業界が建議した▽危機産業団地に対する電気料金引き下げ▽公正取引法の柔軟な適用(談合例外認定など)を通した効率的事業再編誘導などの支援策は出さずにいる。
専門家の間では日本をベンチマーキング対象に選ぶ見方も出ている。韓国より先に石油化学産業が危機に陥った日本は、2014年から政府主導で再編に出た。この際に法制定を通じて企業の統合または分割と設備縮小・効率化などに対する税額控除、課税繰り延べ、ファンドを通じた補助金支給、電気料金引き下げなど国家的な後押しに積極的に取り組んだ。その結果日本のエチレン生産量は2015年の743万トンから2020年には682万トンに減り、2028年は430万トンの達成が目標だ。また信越化学が新事業である半導体素材事業の売り上げの割合を引き上げて世界1位のシリコンウエハー企業になるなど、石油化学市場で中国との出血競争から抜け出し高付加価値製品で新しい未来を開いた企業も急増した。
西江(ソガン)大学化学科のイ・ドクファン名誉教授は「石油化学産業構造調整の最後のゴールデンタイムであるだけに政府が規制緩和とインセンティブ提供など企業の事業再編に必要な制度的支援を惜しんではならない。企業間の生産量調節協議に障害となる公正取引法上の談合条項から解除する必要がある」と指摘した。檀国(タングク)大学大学院科学技術政策融合学科のキム・ヨンジン教授は「いまの韓国の石油化学業界不況は数年間隔で好況と不況を行き来するサイクルにあった過去とは違い、自らの競争力が落ちこれ以上生き残りが厳しい状況に達したもの。輸出競争力の根本的な回復に向けた製品高付加価値化などに政府が明確な指針を提示して主導しなければならない状況」と強調した。
2025/08/31 12:02
https://japanese.joins.com/JArticle/338185