帝国の横暴と韓国の屈辱【コラム】

投稿者: | 2025年9月11日

  米国移民当局の韓国人労働者300人余りに対する逮捕・拘禁事態は、彼らの「自主出国」形の帰国で取り繕われるようだが、決してそうではない。韓国国民は米国の投資要求によって米国に働きに行った韓国労働者が、体と手を鎖で縛られ、さらに足にまで鎖を付ける野蛮な扱いを受けるのを見て、大きな衝撃を受けた。いつまでもわだかまりとして残りかねない出来事だ。

 今回の事態は、今米国で何が起こっているのかを気づかせると共に、気を引き締めさせる一大事件に違いない。この事件を対米投資事業に置かれた弱点と罠を正す警鐘として受け止めない限り、大きな災いに遭う恐れがある。

 事態の本質を理解するためには、ドナルド・トランプ米大統領が主張したMAGA(米国を再び偉大に)運動が何かを改めて考えなければならない。MAGAは1960年代の民権時代以前に米国を取り戻そうとする白人・福音主義勢力の反動だ。核心支持層は低所得・低学歴の白人と福音主義プロテスタント信者たちだ。トランプ大統領はグローバル化の余波による雇用減少と二極化の深化、そして移民者の急増で地位が揺れたこれら階層の不安を代弁し、彼らの怒りを従来のエリート集団と「外部者」(有色人種、不法移民、ムスリムなど)に向かうよう扇動した。

 MAGAは根本的にポピュリズムに基づく白人人種主義だ。「米国を再び偉大に」というスローガンは、より正確に言えば「米国白人をさらに偉大に」に近い。関税政策で特に鉄鋼・アルミニウムだけが50%関税率に固執したのも、これら階層が「ラストベルト」に集中しているためだ。

 ジョージア州の現代自動車とLGエネルギーソリューションの合弁工場に対する大々的な不法滞在者の取り締まりも、このような脈絡で理解しなければならない。私たちの労働者たちを鎖で縛って護送する場面は、あたかも18〜19世紀のアフリカ奴隷たちを引っ張っていく場面を思い出させた。国土安保省は「史上最大規模の単一現場取り締まり」と自慢し、移民税関取締局は人権侵害の素地が多分にある取り締まり映像を自分たちの「業績」を誇示するかのように堂々と公開までした。

 極右色の白人たちは、おそらく心の中で歓声をあげたかもしれない。工場誘致に積極的だったジョージア州知事と地方区議員など政治家たちまでがらりと態度を変え、彼らの不満に同調した。土着の米国人の反移民感情を無視することは難しいからだろう。1950年代に米国社会を襲ったマッカーシズムのように、非理性的な狂気が米国社会を支配している。今回のビザ問題は、同盟国なら事前に通知し、外交的に十分解決できる事案であるにもかかわらず、まるで待っていたかのように装甲車まで動員して見せかけのように取り締まったことは、政治的活用の意図以外には説明できない。

 トランプ政権の「製造業復興」計画は経済的論理よりは政治的利害打算が深く介入した戦略だ。ラストベルト白人階層の不満を煽り、政権獲得に成功したトランプ大統領には、彼らを引き続き政治的に利用しようとする動機が強い。政治指導者が製造業復興政策を推進してみることはできるが、あくまでも「希望事項」に過ぎない。世界史的にそのような試みが成功した事例は見当たらない。それが成功したなら、日が沈まない国だったという大英帝国がなぜ衰退したのだろうか。

 斜陽産業は時が経てば後発国に移ることになっている。韓国でも斜陽産業を復興させることは難しいのに、まして韓国より生産費用が少なくとも30%も高いうえ、20年以上にわたる製造業の空洞化で産業生態系が崩壊した米国は言うまでもない。トランプ大統領は、「帝国の威勢」を掲げ、腕力で同盟国を動員し、これを取り戻すという荒唐無稽な夢を見ているのだ。弱り目にたたり目で、どうにか助けようとした同盟国の労働者たちをあたかも帝国が属国奴隷のように扱う状況では、できることもできなくなるだろう。米国は今、自ら自分の足を引っ張る愚かな行為をしている。

 今回の事件をきっかけに、韓国も対米投資事業を全面的に見直さなければならない。政権交代期にトランプ大統領の強圧に耐えられず、日本のレールに沿って急いで「関税合意」をしたが、冷静に見直さなければならない。米国は日本にトランプ大統領のM任期内に5500億ドルの投資金を執行し、トランプが指示すれば45日以内に資金を出さなければならず、収益金の50~90%を米国が持っていくというとんでもない要求をしたが、韓国にも同じ要求をしているという。

 準基軸通貨国で世界3位の経済大国である日本を真似したら、韓国経済にとっては毒になりかねない。政府は、目の前の危機を免れるため、米国の無理な要求を受け入れるよりは、韓国にできることとできないことを明確に判別し、米国を説得しなければならない。製造業復興計画が失敗しても、世界最大の経済大国であり基軸通貨国である米国にとってはたいした問題はないかもしれないが、韓国経済は大きな衝撃に揺れる可能性もあるという点を留意しなければならない。

2025/09/10 18:53
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/54197.html

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