3つ目、いま米国の対外政策の核心は中国との対決政策にある。しかしトランプ大統領は力の論理に基づいて動く現実主義者だ。ある瞬間、対決よりも大妥協の道に方向を変える可能性がある。米国優先主義とは米国の利益のため同盟の利益を犠牲にするというものだ。このため中国と大妥協に進めば、台湾の利益が犠牲になるかもしれない。「暫定国防戦略指針」で中国が大陸で覇権を掌握するのを防ぐといっても、トランプ大統領はそれと関係なく、いつでも重要な決定を単独で下せる絶対権力者だ。米中の大妥協で国際政治が勢力圏に分割される様相になれば韓国と日本の立場はどうなるのか。地理的に近い権威主義中国の勢力圏に引き込まれるしかないのか。
こうした深刻な戦略的な挑戦要因が、韓日間の協力強化を選択でなく必須にしている。韓日両国の国民はともに民主主義を望む。昨年12月の戒厳令事態後に韓国の国民が見せたのは民主主義に対する熱情的な支持だ。そして両国は貿易を重視するため航行の自由のような規範基盤秩序の維持を望む。仮に台湾海峡が封鎖される場合、両国の経済は深刻な打撃を受ける。このように考えが合う韓日両国が協力しながら指導力を発揮し、似た立場の国家を糾合して連帯を強化していくべきだろう。それが米国の動きに左右されず権威主義連帯に対処する国際的な連帯形成の道だ。さらに韓国・日本が主導するアジア版NATOも考えられる。
このような戦略的な理由以外にも韓日両国が協力すべき理由はいくつもある。中国のレアアース(希土類)輸出統制に見られるように、グローバルサプライチェーンの回復力増強が至急の課題だ。半導体、バッテリー、AI(人工知能)、バイオなど核心産業分野での技術革新も両国が協力すれば大きな進展が期待できる。気候変動の対処と親環境エネルギーへの転換、低成長と人口構造変化問題なども韓日が協力して解決していく課題だ。
先日就任した高市早苗首相は第一声で「韓国は重要な隣国」と述べた。幸いだ。韓国の李在明(イ・ジェミョン)政権がそうだったように、高市政府も岸田-石破政権の韓日協力政策基調を継承することを望んでいる。類例のない不安定な国際政治状況の挑戦を両国が共にリーダーシップを発揮して突破していくことを希望する。
尹永寬(ユン・ヨングァン)/峨山政策研究院理事長/元外交通商部長官
2025/10/25 09:49
https://japanese.joins.com/JArticle/340192