韓米が合意した韓国の原子力潜水艦(原潜)の導入に対し、中国は原則的に懸念を表明するレベルの「静かな対応」を取る一方、攻撃の焦点を米国に合わせている。2021年オーストラリアがAUKUS(米日豪の安保協議体)を通じて原潜導入を決めた当時、中国外務省が「核拡散の脅威を大きく増大させる厚かましい行為」だと強く非難したのとは大きく異なる。
先月29日、李在明(イ・ジェミョン)大統領がドナルド・トランプ米大統領と韓米首脳会談で、「ディーゼル潜水艦では北朝鮮や中国側潜水艦の追跡活動に限りがある。原潜の燃料を供給してもらえるよう決断してほしい」と要請した。「北朝鮮」と「中国」に言及し、原潜の建造方針を表明したのだ。翌日の30日、トランプ大統領は韓国の原潜建造を承認すると述べた。
この日、中国は直ちに外務省報道官を通じて「韓米両国が核不拡散義務を実質的に履行することで、地域の平和と安定を促進し、それを阻害する行為はしないことを望む」という原則的な立場を示した。さらに戴兵駐韓中国大使は13日、記者懇談会を開き「韓米間の原潜協力は単なる商業的協力のレベルを越え、国際不拡散体制と朝鮮半島の平和・安定と直結する問題」としたうえで、「韓国側も懸念を十分考慮し、この問題を慎重に処理することを望む」と述べた。外務省報道官に比べ、やや強目ではあるものの、韓国の慎重な対応を求める線を越えなかった。
官営メディアを通じた中国のメッセージはもう少し批判的ではあるが、攻撃の焦点は主に米国に当てられている。17日、中国官営「グローバル・タイムズ」は「(原潜導入について)専門家たちはインド太平洋戦略に韓国をさらに深く引き入れようとする米国の意図を表わしたもので、韓国をますます危険な境遇に陥れかねないと指摘した」と報道した。この報道が狙ったのは、ダリル・コードル米海軍作戦部長が14日、韓国の核潜水艦が「中国を抑止するのに活用されるというのは自然な予測」とした発言だ。米国の中国封鎖戦略を批判の主な対象とし、韓国がここに同調してはならないという要求を付け加えたのだ。
さらに20日、駐韓中国大使館は「米国官僚の誤った発言に対し、駐韓中国大使館報道官の質疑・応答」という題名の文で、「米国は(韓中関係を)仲違いさせたり、難癖を付けたりしないでほしい」と述べた。この日、ケビン・キム駐韓米国大使代理が中国の西海(ソヘ)構造物を取り上げ「韓米が域内の挑戦課題に協力して対応しなければならない」としたことと、これに先立ちコードル米海軍作戦部長が「韓国の原潜が中国抑止に活用されるだろう」とした発言を批判したものだ。
中国が韓国の原潜導入に比較的慎重な態度を維持する最大の理由は、まず、変化の可能性を考慮したためとみられる。原潜は議論を始めて実際に導入するまでに10年以上かかる長期的課題であり、米国の政治状況によって状況が変わる可能性もある。匿名希望の中国のある外交専門家は、「現在、韓米間で原潜について具体的に合意したことは多くないとみられる。様々な争点が絡んだ原潜を推進する過程で、韓米間に意見の相違が生じる可能性がある」と語った。中国がこの問題に強硬な対応を取った場合、韓米がむしろさらに強く密着する可能性をも見越しているという意味だ。
二つ目の理由としては、日本の高市早苗首相の台湾関連発言で中日関係が悪化した状況で、中国が韓国と原潜で対立する場合ではないという中国の戦略的考慮があったものとみられる。韓米が先月29日に首脳会談を行い、30日にトランプ大統領の「韓国の原潜承認」メッセージを出した直後の31日、日本の高市早苗首相と中国の習近平国家主席が慶州(キョンジュ)で首脳会談を行った。その直後、高市首相が台湾代表と会った写真をソーシャルメディアXに投稿したことで、中日の神経戦が始まった。さらに7日、高市首相が日本の衆議院予算委員会で「中国が台湾を攻撃した場合、日本が軍事的に介入する可能性」に言及したことで、中日の対立は最悪の状況に突き進んでいる。過去の中国のパターンを見れば、中日関係が改善される局面では韓国に強硬な態度を取り、中日関係が悪化する時は抗日の歴史などを強調し、韓国を引き寄せる姿を見せてきた。今、中国は日本との対立に外交力を集中させるする局面と判断し、韓中関係を友好的に管理する戦術を選んだものとみられる。
三つ目の理由としては、「THAAD(高高度防衛ミサイル)事態」の教訓が挙げられる。2016年、韓国政府が在韓米軍のTHAAD配備決定を下した直後、中国が韓国に取った報復措置は、現在中国が日本に注いでいる全面的な圧力と類似したものだった。韓国への渡航自粛を呼びかけ、韓国文化コンテンツを制限(限韓令)し、韓国企業を圧迫し、外交的圧力を次々と加えた。中国外交官が公の場で「中国は大国、韓国は小国」と発言したこともあった。その結果、韓国で高まった中国に対する反感は、反中・嫌中感情に深く根付かせた。中国の外交専門家の間でも、THAAD報復が長期的には中国の国家利益と戦略を損ねたという暗黙の判断がある。
四つ目の理由は、韓国政府が「原艦の推進は中国を狙ったものではなく、北朝鮮の核の脅威に対応するためのもの」というメッセージを一貫して中国に伝えているという点だ。韓国政府関係者は、「韓中首脳会談をはじめ、多くの外交チャンネルで、原潜が必要な理由として、一貫して北朝鮮の脅威を挙げている」とし、「核兵器がない状況で北朝鮮の核の脅威に対応するためには、韓国にもこの程度(原潜)は必要であり、決して中国を狙うものではないという立場を持続的に説明している」と述べた。専門家らは、韓国がこの問題について分裂せず、一貫した姿勢を見せるほど、中国との外交において韓国の立場が強くなるとみている。
2025/11/21 17:51
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/54795.html