境界で咲かせた在日コリアンの芸術魂【コラム】

投稿者: | 2025年11月25日

 最近、韓国の舞台で在日コリアン2世・3世の芸術家たちの成果が連日注目されている。劇作・演出家の鄭義信さん(チョン・ウィシン、68)、映画監督の李相日さん(イ・サンイル、51)、ソプラノ歌手の田月仙さん(チョン・ウォルソン、67)、そして、北朝鮮で改良された弦楽器であるソヘグムの奏者の梁聖晞さん(リャン・ソンヒ、37)がそうした人たちだ。日本で生まれ育ったこれらの人たちは、韓国と日本の歴史・文化の両方に根付く二重のアイデンティティを持つ。どちらか一方に完全に属することができず、社会の周縁を行き来する橋渡し役の人生を反映し、独創的な芸術世界を築き上げてきたことが、これらの人たちの共通点だ。

 23日に開幕した演劇『焼肉ドラゴン』を執筆・演出した鄭義信さんは、この作品を映画化し、小説としても発表した。自身の体験を多く加えたという。在日コリアン一家という特殊な題材を扱いながらも、日本と韓国はもちろん、米国やオーストラリアでも好評を得た。難民や移民など故郷に戻れない人たちの人生と結びつき、普遍的な共感を呼んだからだろう。

 現在、韓国内の劇場で上映中の映画『国宝』を演出した李相日監督は、日本の実写映画の興行記録を更新した。韓国名で活動してきた李監督が、血統を重視する歌舞伎俳優の人生を描いた映画で日本社会を揺るがしたという点が興味深い。「影を背負って生きながらも、光る存在である芸術家の人生」という題材は、日本社会の周縁で頂点を目指して孤軍奮闘する在日コリアンの思いとも重なる。

 ソプラノ歌手の田月仙さんは19~20日、ソウルで公演された創作オペラ『ザ・ラストクイーン』の台本を書き、主演を担当した。日本の皇族出身で英親王・李垠(リ・ウン)と政略結婚したが、その結果、韓国を愛することになり、韓国の地に葬られた李芳子女史の人生を扱った作品だ。幼いころから両親の「アリラン」を聴いて育ったという田月仙さんにとって、「私には二つの祖国がある」という李芳子の叫びは特別な感慨とともに響いただろう。

 25~26日、ソウル市麻浦区(マポグ)のトマトホールで舞台に立つ梁聖晞さんの演奏会も注目される。韓国で公式に開かれる初のソヘグムの独奏会だからだ。ピアノを演奏していた梁聖晞さんは、伝統楽器のヘグムとバイオリンを混ぜたようなソヘグムの独特の音色にすぐに魅了されたという。東洋と西洋の要素がともに込められたこの楽器に、境界を越えて生きてきた自分の姿を投影したからかもしれない。

 内部者と外部者の視点を同時に持つ橋渡し役は、隠された裏面を観察するうえで有利な立場にいる。この多層的な視線こそ、これらの人たちの芸術に深さと独創性を与える源泉なのだろう。

2025/11/23 18:34
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/54813.html

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