1月3日未明、米国がベネズエラに侵攻した。首都カラカスを空爆し、数時間後にベネズエラ政府を瓦解させ、臨時統治を宣言した。空爆、逮捕、臨時統治? 頭がぼうっとした。さらに驚いたのは、1カ月前の12月4日に発表された米国第2期トランプ政権の国家安全保障戦略(NSS)の内容だ。米国は、国家利益の保護が最も重要だという。国境と移民に対する完全な統制権を望みつつ、欧州は移民によって瓦解に至ったと非難している。米国中心の世界では西半球、すなわち米大陸が最も重要だと言う。中南米と北米の諸国にはそれぞれ主権があるのに、米国が影響力を行使するとは、鳥肌が立つ。もはや民主主義は重要ではないとも言う。ならば、米国、ロシア、中国、日本などの超大国が覇権を争う時代の幕を開けようというのか。
第1期トランプ政権時代の2019年のドラマ「2034 今そこにある未来」が思い浮かんだ(若干のネタバレがあります)。BBCとHBOが製作した6部作のこのドラマは、2019年から2034年までの米国や欧州連合(EU)の政治、経済、外交の変化と戦争、生態系の破壊の間に、ある家族がどのような変化を体験するのかを描いている。ドラマの中のディストピアは多くの部分が現実となった。コロナ禍と数百万人の死、ロシアのウクライナ侵攻、米国の連邦最高裁判所が妊娠中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド判決」の廃棄、極右政党の躍進が相次いだ。ドラマでは、トランプが再選され、中国の人工島を狙って核ミサイルの発射ボタンを押す。2020年の米国大統領選挙でトランプが再選されなかった時、私は「2034 今そこにある未来」を思い出しながら胸をなで下ろした。しかし昨年1月に再び米国大統領になったトランプは、第1期時代よりさらに露骨に、かつ全面的に「暴走する男性政治」を展開している。問題のドラマが米中競争を描いたとすれば、トランプ第2期は「利益中心」というパラダイムで民主主義の価値を廃棄し、米大陸のあちこちを侵奪する姿勢を見せている。
暴走する男性政治と言えば、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領もいた。共通点は、異なる意見を言わないイエスマンを要職にすえたり、民主的合意を無視する政治的想像を実行したり、国際法と国内法に違反して軍事を動員したり、マイノリティーの人権を踏みにじったりしていることだ。尹錫悦氏は女性家族部廃止を公約し、「反国家勢力」とか何とか言いながら違法な非常戒厳を実行した。
トランプはさらに踏み込んだ右翼政治を展開している。彼は昨年の就任当日、生物学的男性と女性の2つの性別のみを認める大統領令に署名した。2月5日には、トランスジェンダーの女性スポーツへの参加を禁止する大統領令に署名した。ジェンダー認識論を極端なイデオロギーだとみなして多様性、公平さ、包摂、アクセスを高める政策を「差別的」だと規定した。昨夏、米法務省は「家庭内暴力や性暴力を刑事犯罪ではなく体系的な社会正義の問題と規定する活動」、「被害者支援において米国市民や合法的な居住者より不法滞在外国人を優先するもの」を研究支援から排除すると発表した。トランプは生物学的な男性と生物学的な女性だけを制度の対象とし、女性に対する暴力を構造的な社会不正義とみなすことを拒否することで、人権向上の責務を投げ捨てた。
韓国では市民が2024年12月3日に国会に駆けつけ、寒い冬の間中、路上に座り込んだり、寝転がったり、歩いたりして尹錫悦に立ち向かった。広場を埋め尽くした人々は、暴走する男性政治に反対する人々だ。覇権政治が誰の命をまず奪っていくのかを経験した人々は、民主主義、平和、連帯、ケアの政治でなければ生き残れないということを体で感じている。
しかし、一方ではドラマの中のディストピアも展開されている。ベネズエラ侵攻を戯画化し、薄め、どっちもどっち論を展開している。「2034 今そこにある未来」第1話には、後に極右政党のメンバーとなる政治家が、新人時代にテレビ討論に出演してガザ地区でのパレスチナの苦しみについて問われ、「気にしていない」と述べつつ悪態をついて答えるシーンが出てくる。そして彼が「我が家の前のゴミさえ毎週回収してくれれば」と言うと、リアルタイム検索数が急増する。このような冷笑と無気力は右翼政治の人気を高める。トランプが何をしようが株価チャートさえ良ければ関係なく、北極の夏の氷河が2030年に消え去ってももっと良いマンションに住めれば関係ないと冷笑し、あきらめることのないようにしよう。トランプを止める力は、トランプが分裂させ、排除している全世界の民衆にある。
2026/01/06 19:36
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