韓国の官僚にとって「魂がない」ことは美徳を超えた生存術となった時代だ。元知識経済部長官の崔重卿(チェ・チュンギョン)氏(70)は、そういう意味では確実に例外だった。「チェトラー(崔重卿+ヒトラー)」という尋常ではない別名までついて回った。財政経済部国際金融局長時代、オフショア先物為替市場にまで飛び込む奇襲作戦で為替防衛に乗り出すと、驚いたトレーダーたちが「崔重卿には楯突くな」といって名付けたものだ。彼の所信に対する評価は分かれ、めったなことでは曲げないスタイルゆえに屈折も少なくなかった。次官、経済首席、知識経済部(現・産業通商部)長官を経る合間に、駐フィリピン大使、国際復興開発銀行(IBRD)理事など多彩な海外経歴を持つことになったのもこれと無関係ではない。
◇対米投資法、早急に処理すべき
その崔氏が最近、戦争史を題材にした本〔『戦争から学ぶ人生戦略』(原題)〕を出した。本は歴史の中の戦争の事例を通じて「戦略的意思決定」の重要性を説く。10年余り前、米国のシンクタンクであるヘリテージ財団に滞在していた時期の経験が執筆の一つのきっかけだった。当時、米国の同僚が「君たち韓国政府はなぜそんなにナイーブ(naive)なのか」と、決心したかのように問いかけたのが彼の肺腑を突いた。重要な国際懸案に対し、戦略的な悩みもなく純真に対応していることを皮肉ったのだ。
折しも一山越えたかと思われた韓米関税交渉は、ドナルド・トランプ米大統領の唐突な「再引き上げ」カードによって再びきしみを見せている。外国為替市場も、対米投資発の不確実性に対して依然として不安だ。韓米協会の会長でもある崔氏に、まずこの問題から尋ねた。
–米国との関税交渉が難航している。我々としては裏をかかれた格好だが、対米関係において我々は依然として純真なところがあると思うか。
「相手あってこその交渉だ。決まった答えがあるわけではない。ゲーム理論で語られるように、意思決定主体間に相互依存性がある状況だ。相手の動きを注視し、相手が何を重要視しているかを見て、それに応じて対応しなければならない。トランプ大統領や米政府幹部にとって何よりも重要なのは11月の中間選挙だ。結果によって政治地形とトランプ大統領の運命が決まる。トランプ大統領としては当然、選挙に掲げる実績を欲しがるはずであり、韓国・日本などから受けることにした投資実績は非常に重要だ。選挙で使うには上半期中に可視化しなければならない。だから今、焦っているのだ。ところが韓国国内では、対米投資特別法が国会で眠っている。そのためトランプ側は、投資を実行する意思がないのではないかと疑い始めているのだ。今からでも相手が何を望み、どう動いているのか正確に見るべきだ」
–しかし、我々にも国内の立法手続きがある。国会の批准も論争の的だったが。
「それは事実上、身内の話だ。米国側の立場からすれば、圧倒的多数の与党が野党の反対を押し切って他の法案は通過させながら、なぜ対米投資法だけ今まで放置していたのかと反問できるではないか。大統領が一旦、再引き上げカードを切った状況なので、米国の官僚も韓国が何か具体的な措置を講じるまでは動きにくい。したがって、まずは対米投資法を早く処理することが、状況の悪化を防ぐ道だ。
※崔氏は著書の中で、ゲーム理論を理解できず、不確実な状況を楽観的な状況として固定してしまうことから戦略的失敗が始まると指摘した。太平洋戦争当時の日本軍が代表例だ。韓国国内の事例として2024年の韓米防衛費分担協定を挙げる。米大統領選期間中、トランプ氏が韓国を「マネーマシン」と呼び、分担金を大幅に増やすと言うと、当時の政府はバイデン政権と急いで協定を結んだ。しかし分担金協定は、どちらか一方が再交渉を要求できる行政協定だ。トランプ氏が当選後に再交渉を要求するのは目に見えているのに、実利もなくただ目をつけられる存在になったというのが彼の評価だ。
2026/02/12 15:42
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