数々の研究にもかかわらず、高圧経済は完全に検証された状態ではない。潜在成長率を高めるという経路は十分に解明されていない。経済の圧力を測定する計器板も不正確だ。失業率は数学的にのみ動くわけではない。雇用制度、企業の雇用慣行、文化的特性の影響を幅広く受ける。
2013年にも日銀は「団塊世代の退職による人手不足で賃金が上昇する」と予測したが、見事に外れた。退職した高齢者や女性が低賃金職種に流入したことで、賃金上昇圧力が分散してしまったからだ。労働市場の構造は、高圧経済を実現しようとしている現在も当時と大差ない。
また、金融緩和は未来の消費を先取りし、拡張財政は将来の所得を前借りする効果がある。支出の時期を変えたからといって、成長まで付いてくるという保証はない。その上、インフレ下では極めて危険な逆走となる。
30年以上にわたる出口の見えないデフレからようやく脱却しようとしている日本の立場は、いささか異なる。少し誇張するなら「未検証の新薬をあえて飲もうとする切実な患者の心境」とでも言えるだろうか。高圧経済論者にとって、直近の物価動向はハイパーインフレの懸念を後回しにさせた。2025年に3.2%に達した日本の消費者物価指数(前年比)は、今年2月には1.3%まで下落した。4年連続で2%を超えていたが、今年に入り折れ曲がった物価曲線は、消費の脆弱さを露呈している。他の先進国と異なり、日本で高圧経済が注目されている背景だ。
それに比べ、米国では3月の物価が2月に比べ0.9%、1年前と比べると3.3%も上昇した。ロヨラ・メリーマウント大学教授のソン・ソンウォン氏は米州中央日報への寄稿で「利下げのハードルが高まった」と診断した。米国の金利が据え置かれたまま、日本が高圧経済のために低金利を目指すなら、待ち受けているのは「超円安シナリオ」だ。日本政府が望んでいることなのかもしれない。
では、これは日本の家計にとって望ましいことなのだろうか。超円安とインフレは購買力と実質賃金を減少させる。これに加え、低金利政策は家計の利息収入を減少させる。あらゆる側面で家計をより貧しくさせてしまう。所得格差を広げる効果があることも無視できない。「庶民や中産階級を対象とした静かな略奪」と言っても過言ではない。
金融緩和を断行したからといって、企業が投資を増やすかも疑問だ。日本企業の手元資金は潤沢だ。金がないからではなく、理由がないから投資をしないだけだ。投資をするにしても海外で行う。日本が貿易赤字にもかかわらずGDPの3~4%の経常収支黒字を出しているのは、企業が海外投資で稼いだ所得収支のおかげだ。
このような状態で拡張財政と金融緩和を行えば、資産価格を押し上げざるを得ない。不動産や株式市場にバブルが生じやすくなる。これは最終的に実物経済を巻き込み、巨大な調整を経て収束するものだ。バブルは結局、弾ける。もちろん、高圧経済はバブルを作ろうという政策ではない。しかし、その作動方式は「管理された過熱」あるいは「小さなバブル」を容認する戦略だ。バブルは意図してはいないが、結果を予見しながら強行する「未必の故意」に近い選択である。サナエノミクスの高圧経済は、プロメテウスの火のように代償を前提としている。
反対方向に進む植田日銀総裁は先日、「実質金利は極めて低く、金融環境は非常に緩和的だ」と述べた。また、需要が供給に対して0.45%ほど超過した状態にあり、インフレ圧力が予想されるとも語った。高圧経済に概ね懐疑的な日本メディアは、これを利上げの根拠固めと解釈している。債券市場で長期金利はすでに先週2.435%と、10年ぶりの高水準に達した。20日の日銀の調査では、消費者は5年後の物価が平均10.3%上昇すると予想した。統計と心理の間には無視できない温度差がある。
政府首脳と中央銀行総裁の相反する立場が、いつまでも平行線を辿ることはできない。天に二つの太陽がないように、経済の司令塔も同様だ。近いうちに「交通整理」が行われるだろうが、摩擦音の大きさに応じて市場が乱高下する可能性がある。1971年にノーベル経済学賞を受賞したサイモン・クズネッツ(1901~85)は、かつてこう語った。「世界には4種類の国がある。先進国、後進国、アルゼンチン、そして日本だ」。彼の言葉通り、日本は今もなお例外の道を歩んでいる。
2026/04/27 14:47
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