消えゆく日本の「手厚い歓待」【朝鮮日報コラム】

投稿者: | 2024年6月1日

 最近、日本山梨県のあるコンビニの前に高さ2.5メートル、幅20メートルの黒い幕が設置された。この場所から日本最高峰の富士山の全景が見渡せるため、常に外国人観光客でにぎわっているが、騒音や投げ捨てごみなどの問題が発生したことで、富士山が見えないように隠してしまったのだ。「コンビニの前で地域の特産物を販売するなど、いくらでもチャンスに変えることができるわけだが、これは行き過ぎた措置」といった指摘が日本国内からも上がっている。

 東京浅草など日本の主要観光地に位置する雑貨店やスーパーマーケットの店舗には、最近レジに椅子が設置されていて、話題となっている。昨年アルバイト労組の要求に従ったもので、企業側も「座ってお客さんに応対してもいい」として続々と指針を変えている。コンビニの前に黒幕を設置しようが、従業員が座って接客しようが、大したことではないと容易に片付けることもできる。しかし、日本特有の「手厚い歓待」文化を考慮すると、最近外国人を眺める日本の視線に変化が生じたことを端的に感じさせる。

 日本の飲食店や雑貨店などの従業員は接客の際、腰の角度から表情やコメント、言葉のスピードに至るまで、教育を受けるケースが多い。外部からの顧客を手厚く招き、再び訪れるようにするという、いわゆる「おもてなし」の文化だ。このような文化が最近、観光客への接し方を皮切りに陰りが見え始めている。

 最近の円安で外国人観光客が増え、オーバーツーリズム(観光公害)が問題として浮上すると、日本人の外国人を眺める視線は冷笑的に変化した。一番の問題は、「これが嫌なら来るな」といった具合に解決しようとしていることだ。北海道きっての観光地であるニセコ町は、今年11月から旅行客1人に付き最高で2000円の「宿泊税」を徴収する。大阪では外国人観光客から徴収金を徴収する案を検討中だ。東京の一部のレストランは、日本語ができない顧客に対し食事代を1000円ずつ引き上げると宣言した。

 現地の観光専門家でさえ、こうした措置が「日本の美徳を崩す恐れがある」と懸念する。ある教授は「外国人は来なくてもいいといった発想は非常に危険だ。しかも、人口が減少している時代でないか」と警鐘を鳴らす。一方で、最近の日本社会に対する外国人の不満をつづった記事には、こうした現地のネチズン(インターネットユーザー)のコメントが書き込まれた。「日本は天国ではない」 。日本はもはや外国人のための「天国」のような国ではなく、自国を訪れた外国人がむしろ不便さを甘受しなければならないという意味だった。

 最近、韓国国内のある芸能人が飲食店で一般人の顧客の食事代を支払ったことで話題となった。その芸能人は「この方々が(私が)食べていけるようにしてくれたから」と言って感謝の気持ちを表した。日本が観光大国になった背景も同じだと思う。特有の「おもてなし文化」も一役買っただろうが、逆に地道に訪れる観光客がいなかったら、今のように発展しただろうか。自分勝手な利己的判断は禁物だ。

キム・ドンヒョン記者

2024/06/01 07:00
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2024/05/28/2024052880144.html

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