ガルーチ元米次官補「失敗・誤判断が東北アジアに核戦争招く可能性も…対話が必要」

投稿者: | 2024年6月1日

 北朝鮮の核開発初期に核交渉の主役だったロバート・ガルーチ元米国務省次官補は、韓国と米国が北朝鮮に対して強硬に抑止だけを強調する場合、誤った判断による北朝鮮との東北アジア核戦争の可能性を排除できないとしたうえで、抑止とともに北朝鮮との対話の道を探らなければならないと強調した。

 済州(チェジュ)フォーラムに参加しているガルーチ元次官補は30日、西帰浦(ソギポ)の済州国際コンベンションセンターで、記者団に「北朝鮮がすでに持っている核を放棄する可能性はないが、より多くの核兵器を開発しないことには同意できる」としたうえで、「南北・朝米関係の改善においては、北朝鮮が安心できる環境を作ることが重要だ」と述べた。

 ガルーチ前次官補は、今年の米国大統領選でトランプ氏が勝利する場合、同盟に対する信頼度が低下し、韓国と日本が6カ月以内に独自の核武装の道に進む可能性もあるとしながらも、「韓米同盟と日米同盟は条約に基づく同盟であるため、トランプ氏が思いのままにできるものではない」と述べた。韓国に戦術核を再配備しようという主張は「悪い考え」だと一蹴した。

‐今年1月に「東北アジアで今年、核戦争が起きる可能性がある」と警告する文章を発表したことがある。今でも戦争の危険性があると考えているのか。

 「米国は北朝鮮に対する抑止を強調するが、抑止は失敗する可能性がある。誤った判断や失敗が起こりうり、人工知能(AI)による誤った判断が広がり戦争が起きる可能性もある。北朝鮮が敵対的発言と行動を続け、韓国と米国も強硬な姿勢で行動には行動で対抗すれば、核戦争が広がる可能性がある。こういうことを警告するために文章を書いた。北朝鮮は現時点ではそのような能力を持っているとはみられていないが、北朝鮮が米国本土に対する攻撃を行い、中国がそれに関与する場合、戦争拡大の可能性が高く、それを防ぐ代案を用意しなければならない。抑止がすべての解決策であるはずはなく、最終的には対話をしなければならない」

‐最近、米共和党議員が、朝鮮半島に戦術核を再配備する必要がある主張していることをどう思うか。

 「韓国に戦術核を再配備することは、韓国、北朝鮮、米国のいずれにとっても望ましくない。北朝鮮はすでに核兵器を保有している。米国が韓国に戦術核を再配備する場合、北朝鮮がそれを先制攻撃しないという保障がない。このような状況を考慮すれば、韓国に戦術核の再配備を主張することは悪い考えであり、韓国の安全保障の状況をまともに考慮しないものだ。米国は韓国に拡張抑止を約束したし、核共有に近い核協議グループ(NCG)を稼動することも約束した。これに加えて、米国はこの地域に多くの潜水艦をはじめとする海上搭載戦術核兵器を保有している。これを通じて、十分に北朝鮮を抑止できる。核兵器を使えば北朝鮮の体制は生存できないことを北朝鮮はよく知っていると考える」

‐ドナルド・トランプ前大統領が政権をふたたび握る場合、同盟体制が弱まり韓国が独自の核武装に進むとみるか。

 「トランプ氏が再選して米国大統領に再任する場合、韓国と日本が6カ月以内に核武装に進む恐れがある。トランプ氏が韓国と日本との同盟を重視しないと、韓国や日本などの同盟国では米国の安全保障の公約に対する確信が弱まるため、韓国と日本が最終的に独自の核武装に進む可能性も高いとみる。トランプ氏の行動パターンをみると、韓国や日本などが米国に無賃乗車を続けていると主張しており、在韓米軍と在韓米軍に対しても大した関心はないだろう。しかし、韓米同盟と日米同盟は条約に基づく同盟であり、これらの国々の安全保障は米国にとって死活的だ。この同盟は米国が一方的にこれらの国々の助けになっているのではなく相互依存的であり、同盟国が米国に与える助けが大きい。トランプ氏の行動を予測することは難しいが、米国の全般的な世論は同盟国を重視するため、トランプ氏が思いのままにできるのではないと考える」

‐北朝鮮の非核化は今でも可能なのか。

 「30年前、金日成(キム・イルソン)が北朝鮮の指導者だったとき、私は北朝鮮のカン・ソクチュ第一副外相を相手に北朝鮮と核交渉を行った。当時を振り返ると、私は少しナイーブだった。北朝鮮が非核化の意志があったのかについて、当時の米中央情報局(CIA)は北朝鮮の寧辺(ヨンビョン)の核施設については把握していたし、私たちの交渉は北朝鮮のプルトニウムの核開発に対するものだった。しかし、私たちは、その時すでに北朝鮮がパキスタンから遠心分離機技術を持ってきて、秘密裏に高濃縮ウランを開発していることを、すぐに知ることになった。北朝鮮の非核化の意志は信じることはできない。金正恩(キム・ジョンウン)委員長がすでに保有している核兵器を放棄する可能性はない。しかし、より多くの核兵器は開発しないことには同意できるはずだ。ただし、核保有国と核兵器を保有している国は区別しなければならない。核拡散防止条約(NPT)が公認する核保有国は米国、英国、中国、ロシア、フランスだけだ」

‐ならば北朝鮮核問題を解決するための代案は何か。

 「北朝鮮の立場としては、自分たちはすでに核武器を保有する国家であり、核を放棄するための対話や交渉はしないという立場だ。それにいちいち反論すれば、交渉の余地は初めからない。大きな枠組みで朝鮮半島と東北アジア地域に核兵器がない世界が実現されることが望ましい。何より、南北、朝米関係が改善されなければ、北朝鮮の非核化が実現されるかについては懐疑的だ。北朝鮮に核を放棄させるためには、北朝鮮が安心できる環境が造成されなければならない。北朝鮮の立場も推しはかることが重要だ。(韓米が)一方的に進めてはならない」

‐北朝鮮は、もはやこれ以上南北・朝米関係を重視せず、ロシアと密着して安全保障問題を解決しようとしているようにみえる。ロシアが北朝鮮に先端軍事技術を提供する可能性が高いとみるか。

 「北朝鮮とロシアの協力は強く懸念される。ロシアは最近、国連安保理の対北朝鮮制裁専門家パネルに拒否権を行使するなど、北朝鮮に対する制裁を弱めている。北朝鮮とロシアが軍事技術に対してどのような協力をしているのかについては、正確にはわからない。しかし、3つの点を懸念して注目しなければならない。1つ目は、爆発力を高める核弾頭の設計について、北朝鮮には精巧な技術が不足しているが、北朝鮮はロシアからそれを確保できる。2つ目は、生物兵器と化学兵器の技術提供も懸念しなければならない。3つ目は、核兵器運搬手段である弾道ミサイル技術だ。北朝鮮、イラン、パキスタンの弾道ミサイル技術は、ロシアから広がったものだ。北朝鮮は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)が大気圏内に再突入する際に核弾頭を保護できる技術に関心を持つだろう。このような点に対する朝ロの技術協力を鋭意注視しなければならない。”

‐バイデン政権になると北朝鮮との交渉が完全に中断し、北朝鮮は核とミサイルの能力を大幅に増強した。バイデン大統領が再選した場合、ふたたび北朝鮮との協議に入れるだろうか。

 「米国の国家安全保障補佐官と国務長官は、外交政策において費用とリスクを考慮する。今の状況をみると、ロシアのウクライナ侵攻、ハマスのイスラエル侵攻、イスラエルのガザ侵攻、台湾の偶発的な事態の可能性に集中しており、北朝鮮に対して集中する余力はなかった。バイデン政権が2期目も続くのであれば、その場合は北朝鮮問題に集中することを望む。韓国と協調すると同時に、北朝鮮に一方的に非核化せよと要求するのではなく、関係を正常化しようと言って北朝鮮を安心させてこそ、非核化も進展させることができる。それがより現実的なアプローチ方法だ。北朝鮮との関与が優先だと考える」

‐韓国と中国が韓中安全保障対話を新設した。中国が望ましい役割を果たすと期待するか。

 「現時点では北朝鮮の強硬な態度は強く懸念されるが、韓中が外交安全保障対話を新設し、安全保障問題について対話することにしたのは望ましい。中国が北朝鮮の態度を和らげる役割を果たすことに役立つ」

2024/05/30 17:03
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/50184.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)