韓国政界を揺さぶる「ニューライト」

投稿者: | 2024年9月17日

「首相は『ニューライト』をご存知ですか」〔申栄大(シン・ヨンデ)共に民主党議員〕

「『ニューレフト』もあるのですか。どうか“色塗り”はしないでほしい」 〔韓悳洙(ハン・ドクス)首相〕

 2日の韓国国会予算決算特別委員会全体会議で、申議員と韓首相が交わした舌戦だ。3日、安昌浩(アン・チャンホ)国家人権委員長候補人事聴聞会でも「もしかしてニューライトですか」〔徐美和(ソ・ミファ)共に民主党議員〕、「ニューライト史観が何ですか」(安昌浩国家人権委員長候補)のような攻防が続いた。

いわゆる「ニューライト」論争が9月政界を飲み込んだ。野党圏は金文洙(キム・ムンス)雇用労働部長官や安昌浩国家人権委員長候補ら、最近尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府の主要人物と韓日関係をはじめ独島(トクド、日本名・竹島)造形物撤去や歴史教科書問題などを前面に出して「ニューライト」総攻勢をしかけた。与党は「理念主義に持っていこうとするな」と対抗した。尹大統領は先月29日、国政会見で「正直、ニューライトとは何かよく分からない」とまで話した。政界関係者は「80~90年代『セッカル論(理念論)』攻防を連想させる」とし「変化したのは保守と進歩側の攻守が逆になったこと」と話した。

(1)2004年保守危機に登場、李明博(イ・ミョンバク)時期に全盛期→朴槿恵(パク・クネ)時期に失速

ニューライトは1990年代後半に胎動した保守運動だ。ソ連崩壊と北朝鮮の実状に衝撃を受けたソウル大経済学科のアン・ビョンジク名誉教授、『鋼鉄書信』の著者・金栄煥(キム・ヨンファン)ら左派を擁護した人々の反省的運動から出発した。2000年代以降、ソウル大の李栄薫(イ・ヨンフン)名誉教授ら落星垈(ナクソンデ)研究所を中心にする「植民地近代化論」グループが加わった。

彼らは2004年総選挙でハンナラ党が大敗した後に急浮上した。「開かれたウリ党」に単独過半(152議席)を許し、危機に陥った保守政治圏は「反共」等の既存右派との差別化を図り、この過程でニューライトを掲げた。特に2007年大統領選挙の時、ニューライト全国連合、時代精神、正しい社会市民会議などニューライトグループが李明博元大統領を支援して影響力が大きくなった。

だが、朴槿恵政府では「ニューライト=親李系」という烙印のせいで力を発揮できなかった。延世(ヨンセ)大の金皓起(キム・ホギ)教授は「ニューライトは市場的保守政府という点で以前の保守政府と区分される」とし「李明博政府が市場的保守とするなら朴槿恵政府は安保的保守への回帰」と説明した。

(2)尹錫悦政府で再照明

尹錫悦政府でニューライトが再び注目を集めたのは、金泰孝(キム・テヒョ)国家安全保障室第1次長、金暎浩(キム・ヨンホ)統一部長官、ハン・オソプ元政務首席ら、過去にニューライト運動に関与した人々が登用されながらだ。民主党は彼らの影響で尹錫悦政府が「親日政策を行っている」と主張する。民主研究院の李韓柱(イ・ハンジュ)院長は「ニューライトの代表的特徴は親日的態度」とし「強制徴用労働者に対する第三者弁済方式や独島造形物撤去問題など、親日を疑わざるをえない状況が多い」と話した。

与党要人は親日志向とは関係がないという立場だ。ニューライト運動を主導したある政界要人は「ニューライトの核心は保守陣営のイデオロギーを反共から自由主義に変えようというもの」としながら「植民地近代化論は本流ではないのに『ニューライト=親日』と罵倒されている」と吐露した。

実際、尹錫悦政府の人々は植民地近代化論とは距離を置いたまま、李承晩(イ・スンマン)元大統領と単独政府樹立を再評価することに傍点を置いている。前回の総選挙を控えて韓東勲(ハン・ドンフン)当時「国民の力」非常対策委員長が映画『建国戦争』を観覧したのが代表的だ。

(3)過度な理念論争に「現代版礼訟論争、学界に任せるべき」

専門家は民主党の親日攻勢が「行き過ぎた面がある」という立場だが「政府が自ら招いた」という指摘もある。

ポリコムのパク・ドンウォン代表は「正直、独島放棄というものが可能だと思う国民がどれくらいいるだろうか」としつつも「尹大統領が洪範図(ホン・ボムド)銅像撤去論争のようなものを不必要に目立たせて口実を与えた側面がある」と指摘した。

別個でニューライト攻防が韓国社会を退行的理念戦に引き込んでいるという懸念も大きい。匿名を求めた政治学科の教授は「建国時点や臨時政府に対する評価は学界でも論争が激しい領域」としながら「政治家がこれを政派的利益のために過度に引き込んで消耗している」と話した。また別の政治学科教授は「意見が異なれば『ニューライト』と烙印を押す雰囲気が広がる。もう一つの『マッカーシズム』になりかねない」とし「学界でも李承晩関連の論文審査が理由なく保留される場合が多い」と話した。彼らは「論争に巻き込まれたくない」として匿名を希望した。

誠信(ソンシン)女子大史学科のホン・ソンユル教授は「尹錫悦政府に参加した人々が『ニューライト』という名前で縛られる傾向もある。だが、金炯錫(キム・ヒョンソク)独立記念館長のように特別な活動がなかった要人が『建国節』発言ひとつで同じ部類に入れられるのは曖昧な側面がある」と話した。

ポリコムのパク代表は「死んだ王の正統性を論じて『喪服を3年着るべきか、6年着るべきか』を巡って戦ったことと何が違うのか」とし「AI(人工知能)、気候変動、医療大乱など扱わなければならない議題が山積しているのに、政界が国民を限りない過去のドロ沼で引っ張り込んでいる」と批判した。

2024/09/17 07:44
https://japanese.joins.com/JArticle/323791

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