トランプの貿易戦争設計者、保護貿易障壁を積むレンガ工、貿易戦争を裏であやつる者。
米国メディアがピーター・ナバロ大統領上級顧問を示す表現だ。第1次トランプ政権で4年間務め第2次政権にも抜擢された経済官僚は彼が唯一だ。2人の関係は2011年に遡る。トランプ氏がLAタイムズのインタビューで好きな本10冊のリストを公開したが、カリフォルニア大学アーバイン校教授だったナバロ氏の共著『中国が呼んだ死』を6位に上げたのが縁になった。
ナバロ氏はこの本で中国の不公正貿易慣行を批判し、その結果として米国が危険に直面するだろうと警告した。一般的でない見解だった。当時は中国の成長がみんなを豊かにするというバラ色の見通しが優勢な時だった。ナバロ氏は2012年に同名のドキュメンタリーも制作した。トランプ氏は「この重要なドキュメンタリーは事実関係と数値、洞察力を基に中国に対するわれわれの問題を見せる。必ず見るべき」と推薦した。
2人のアウトサイダーは手を握った。関税を米国の貿易赤字解消に向けた核心手段と考えたナバロ氏と自称「タリフマン」のトランプ氏が意気投合した。ナバロ氏が2019年にウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿を通じて相互関税賦課の必要性を主張して6年が過ぎた2日、トランプ大統領は90カ国に10~50%の相互関税を課すと発表した。
ナバロ氏は他の国が米国から「ぼったくっている」と信じる。彼はボストン公営放送(WBUR)とのインタビューで「米国は世界で最も裕福な国だった1950年代から世界が第2次世界大戦から回復する間に世界の貯金箱の役割をしてきた。関税は米国企業と労働者にとって傾いた運動場を平らにするもの」と話した。
不公正な貿易が大規模貿易赤字を招き、工場など製造業の基盤崩壊はブルーカラー労働者の失業につながったというのがナバロ氏の考えだ。彼は逆順で解決方法を見いだそうと考えた。雇用を作るには製造業基盤を回復させねばならず、輸入品に関税を課して米国での生産を奨励すれば製造業も回復し貿易赤字も減ると考えた。
ナバロ氏は2023年にヘリテージ財団が出した次期保守大統領に向けた政策提案書の貿易編を執筆した。彼は米国の製造業・防衛産業基盤と供給網の海外移転により、「米国が戦争しなければならない状況、すなわち欧州・日本・台湾のような主要同盟を支援しなければならない場合、『民主主義の兵器廠』の役割をした第1・2次世界大戦のように必要な武器や材料を提供できないかもしれないとの恐怖がある」と書いた。こうした脈絡で「経済安全保障は国家安全保障と直結する」と強調した。
ナバロ氏は不公正貿易の核心原因として世界貿易機関(WTO)、最恵国待遇(MFN)を挙げる。MFNは特定国に低関税を課すならば残りの加盟国にも低関税を課さなければならないという原則だ。差別を禁止して自由貿易を拡大しようという趣旨で導入したが、加盟国を同等に待遇すれば関税を高く維持してもかまわないため関税が低い米国だけ損害を受ける構造ということだ。高関税国が米国と交渉するインセンティブがないためだ。
米国の平均MFN関税は3.3%、韓国は13.4%、中国は7.5%などだ。自由貿易協定(FTA)を結んだ国の間ではFTA関税がまず適用されるが、米国がFTAを締結した国は多くない。ナバロ氏は7日にフィナンシャル・タイムズへの寄稿で「トランプ大統領の相互関税政策が故障した世界貿易体系を直すだろう」としながらWTOの失敗を米国が解決するために乗り出したと説明した。
主流経済学者は広範囲な高率関税は輸入品価格を引き上げて超インフレを招くと指摘する。ナバロ氏は「関税を世界最大市場が賦課すればインフレは生じない」と対抗する。その理由として「米国が物を買わなければ生き残れない輸出依存型の国は関税に対応するために自ら価格を低くすることになるのが確実だ」と主張した。
トランプ氏は参謀らと貿易政策を討論しながら穏健派の「抵抗」を受けたときには「私のピーターはどこにいるのか」としてナバロ氏を探す。中国、そして世界貿易が米国に脅威という認識が共感を得にくかった14年前、「中国タカ派」のナバロ氏にトランプ氏は一筋の光明であり、トランプ氏にナバロ氏は「米国を再び偉大に(MAGA)」する貿易政策の理論的根拠を提供する策士だ。
2025/04/09 17:57
https://japanese.joins.com/JArticle/332341