米国のドナルド・トランプ大統領が関税戦争に火を付けた今月初め、韓国法務法人広場(LEE&KO法律事務所)の朴泰鎬(パク・テホ)国際通商研究院長はワシントン近郊で開かれた「The Trilateral Commission」総会に出席した。The Trilateral Commissionは「石油王」ジョン・ロックフェラーの孫であるデービッド・ロックフェラー氏が北米・欧州・アジアの3地域間の協力を増進するために設立した国際フォーラムだ。米国のスコット・ベッセント財務長官も対談者として出席した。関税戦争が皆の関心事だった。
外交通商部通商交渉本部長(2011~2013年)を務めた朴氏は11日のインタビューで「スティーブン・ボーン元通商代表部(USTR)代表代行らトランプ側近は確信に満ちていて、関税を通した投資誘導、非関税障壁の撤廃、ドル安などを具体的な目標として持っていた」としながら「関税政策は究極的に製造業を復活させて雇用を作り出すと信じていて後退は絶対にないと強調した」と伝えた。次は一問一答。
–トランプ側が考える関税戦争の根本原因は。
「米国は最も自由な貿易ができるように開放したが、世界ほぼすべての貿易相手国は非関税障壁などで真の開放をしていないと判断する。中国が最終対象だが、中国と交渉する前に他の国々との交渉を通じて非関税障壁とは違う問題を解決しようとしているようだ」
–トランプ氏が相互関税90日猶予に一歩後退した。米国と中国のうち、どちらのほうがカードを多く持っているのか。
「やはり経済規模が大きい米国のほうが多くのカードを持っていると思う。米国は関税だけでなく、対中国輸出統制、技術移転、海外投資規制などさまざまなカードがある。しかし中国や欧州連合(EU)など経済規模が大きい国が米国に報復措置を取り、その措置が同時に施行されるなら米国も被害を受ける場合があり、世界経済にも否定的な影響を及ぼすだろう」
–トランプ側は国際貿易秩序に対する不信が大きいが。
「2001年中国は世界貿易機関(WTO)の加入で市場経済を受け入れて引き続き開放するだろうとの期待が集まっていたが、開発途上国の地位を維持してあらゆる貿易障壁と規制を維持した。その結果、中国は米国市場を百分活用した反面、自国市場の開放には消極的だった。決定的だったのは、2001年開始したWTOドーハラウンド交渉が中国とインドの粘り強い反対で10年以上続いて最終的に失敗した。米国は市場開放交渉をこれ以上行うことができず、新しい貿易規範の制定も開発途上国の反対で難航したことを受けて、WTOに対する信頼を完全に失うことになった」
–米国の相互関税賦課は韓米自由貿易協定(FTA)も、WTO最恵国の待遇原則も無視するという態度だ。第2次世界大戦終戦から80年間維持されてきた自由貿易秩序は終焉を迎えるのか。
「米国が主導して多国間貿易体制を復元して必要な改革を行うなら分からないが、米国が全く関心を示さないなら1970~80年代GATT(関税および貿易に関する一般協定)体制やWTO中心の自由貿易秩序はこれ以上形成するのは難しいだろう。これからは立場が同じ国々が集まってグループ別に貿易ルールを定めて自由化を推進する『複数国家間貿易協定』が推進されるだろうと予想する」
–今のところトランプ対応も重要だが、中・長期的成長戦略も変わるべきではないだろうか。
「輸出で経済成長を遂げた韓国としては最近の世界貿易環境は非常に不利に展開している。関税圧迫によって米国に工場を作れば韓国内の雇用は減ることになる。国内産業が空洞化する懸念もある。韓国製造業者が米国に進出しても利益を国内に還元して先端技術に再投資する方向に向かなくてはならない。海外に進出した韓国企業が必要な先端技術分野の素材・部品・装備(素部装)を作って供給することに努力を傾けなければならない。韓国を先端技術素部装供給のグローバルハブへと発展させなければならない」
–米国から圧迫を受ける韓国・中国・日本が協力する可能性は。
「韓国が中国・日本などと共に米国に対応する姿は見せてはいけない。ただし、韓中日内のFTAを構築することは問題はなく、推進するに値する。韓国企業は中国を市場として見て、輸出拡大努力を続けなくてはならない。中国に対する輸入依存度を小さくしていくことも重要だ」
–トランプ関税戦争の最後の姿は。
「関税政策は相手国からさまざまな分野から利益を得る手段とみるべきだ。不法移民、麻薬、直接投資の流入、製造業活性化、雇用創出、貿易不均衡の解消、非関税障壁の撤廃などだ。関税賦課が長期化すればインフレを誘発して結局利率を高めて米国経済に否定的影響を与えるだろう。トランプ氏の関税政策は持続可能ではなく、中国を含む主要国との交渉が終われば完全撤回ではなくても大幅に緩和するのではないかと予想する」
→朴泰鎬=ソウル大学経済学科を経て米国ウィスコンシン大(マディソン)で経済学博士学位を取得。ソウル大学国際大学院教授として在職中に外交通商部通商交渉本部長に抜擢される。現在は法務法人広場(LEE&KO法律事務所)国際通商研究院長。
2025/04/14 13:15
https://japanese.joins.com/JArticle/332504