在韓米軍って削減しちゃダメなの?

投稿者: | 2025年7月16日

チョン・ウィギルのグローバルパパゴとは?

 パパゴは国際公用語のエスペラント語でオウムを意味します。鋭い洞察と豊富な歴史的事例で武装したチョン・ウィギル先任記者がエスペラント語でさえずるみなさんのオウムとなって、国際ニュースの行間を分かりやすく解説します。

何が起こっているの?

 米国のトランプ政権が在韓米軍の削減および役割の変更、駐留費と防衛費の引き上げを韓国に迫っている。在韓米軍を4500人削減するという報道、在韓米軍の規模を1万人に削減するとする研究報告書など、削減論議が本格化している。また米国の当局者からは、在韓米軍による中国けん制、「朝鮮半島不沈空母」、台湾有事における韓国の貢献などに関する発言が続出している。あげくにトランプ大統領は、韓国は在韓米軍の駐留費を「ほとんど支払っていない」と述べている。編集者

Q.発足後のトランプ政権の在韓米軍についての主張や要求は、具体的にどのようなものなの?

A.規模を縮小しろ、役割も変えろ、費用は韓国がもっと負担しろと言っている。

 これらの要求は、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が5月22日に、現在は2万8千人あまりいる在韓米軍から4500人をグアムなどのインド太平洋の別の基地に移動させることが米国防総省内で検討されていると報道したことで本格化した。米国防総省と在韓米軍は翌日、その報道は「事実ではない」と否定した。こういった即時の否定そのものがかなり異例だ。それだけこの問題は米国や韓国にとって敏感な問題だということだ。WSJも、非公式の政策検討の一環であって、トランプ大統領には報告されていないと報じている。このことをめぐっては、国防総省の内外で議論が盛んなんだ。

 ヘグセス国防長官の上級顧問を務めたダン・コールドウェルが、国防シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」の研究員と共同で今月9日に発表した報告書で、在韓米軍から大半の地上戦闘兵力、戦闘飛行大隊2個大隊などを撤退させ、残すのは約1万人のみとすべきだと提案している。最終的には、在韓米軍をさらに減らし、残りの飛行大隊と地上軍の大半を撤退させるべきだと彼らは言っている。

 コールドウェルは米国の外交・安保の高官がフーシ派の空爆を民間のメッセンジャーのチャットルームで議論したシグナルゲートに関与し、4月に長官の上級顧問を解任されている。彼は全世界で米軍の態勢と役割を点検する国防戦略(NDS)の樹立に関与しており、彼の今回の報告書はその方向性を示唆している。

Q.米国はなぜ在韓米軍を削減しようとしているの?

A.コールドウェルの報告書がそれをよく説明してくれている。報告書は「朝鮮半島以外の域内の他地域で紛争が発生した際の、韓国にある基地を制限なく使用するアクセス権を、韓国が米国に対して認めなかったから」だとして、「域内で局地戦が発生した際、韓国にある米軍の戦力を使用できなくなる恐れがある」と言っている。韓国に縛り付けられている米軍の戦力を他の場所で使いたいというわけだ。

 コールドウェルの報告書は、東アジアにおける米軍の役割を中国けん制と米国の利益の保護へと再編すべきだとして、既存の在韓米軍などの東アジアにある米軍の戦力をグアムなどのより後方に配備することを提案している。東アジアでの米軍の駐留の中心を日本(沖縄)-台湾-フィリピン-ボルネオとつながる既存の「第一列島線」から、グアム-サイパン-パプアニューギニアなどをつなぐ第二列島線へと後方に移動させようというのだ。WSJが報道した4500人の在韓米軍の削減兵力のグアムへの再配備も、同じ脈絡からのものだ。

 これは米国の世界戦略に沿ったもので、在韓米軍も例外ではない。つまり米国は、オバマ政権時代から対外戦略の最優先課題として設定していた中国との対決のために、インド太平洋へと国力を集中させ、在韓米軍もそのような目的に服務させようとしているわけだ。朝鮮半島の米軍をグアムなどのインド太平洋の別の場所に配備するとともに、在韓米軍も今や中国けん制のためのものへと転換しようとしているのだ。米国の在韓米軍削減は結局のところ、その役割の変更を意図したものだというわけだ。

Q.なら、在韓米軍はこれから削減されるの?

A.朝鮮戦争以降、在韓米軍は削減され続けてきた。韓国の意思とは関係なしに、米国の戦略に沿って決定されてきた。現在の在韓米軍の規模が長期的にみて縮小されることは明らかだ。

 代表的な例が、ニクソン政権時代の1971年に陸軍第7師団など2万人が撤退し、在韓米軍が4万3千人に削減されたこと。ニクソンは1969年に「アジア防衛はアジア諸国が責任を負うべきだ」というニクソン・ドクトリンを発表している。ベトナム戦争からの撤退、中国との和解のための戦略だった。ソ連崩壊などで冷戦が終息した1992年にも、7千人あまりが削減された。この時から米国は、韓国に在韓米軍の駐留費を支払わせてきた。

 2004年から2008年にかけては第2師団の一部撤退、東豆川(トンドゥチョン)から平沢基地への移転に伴って、最終的に1万人近くが削減された。当時、米国はイラク戦争やアフガン戦争に足を引っ張られていたため、在韓米軍の戦力をそちらに向けたがっていた。この時、米国は、在韓米軍を韓国にはりつけるのではなく他地域の紛争にも利用するという役割の変更を開始した。米国は在韓米軍の迅速機動軍化、広域機動軍化などの「戦略的柔軟性」を追求した。

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は米国に迫られて在韓米軍の戦略的柔軟性に合意したが、「米国は、韓国は韓国国民の意志とは関係なしに東北アジアの地域紛争に介入することはないという韓国の立場を尊重する」という但し書きを付けた。つまり、他地域の紛争への介入などの在韓米軍の役割の拡大に対し、東北アジアの外に線を引いたのだ。在韓米軍による東北アジア地域の紛争への介入は、韓国も自動的に介入させられる恐れがあるため、それを防ごうとしたわけだ。

 オバマ政権以降、米国は中国との対決を最優先とする「アジアへの軸足移動」などの戦略を掲げ、在韓米軍の役割の変更や韓国に対する要求が高まった。これはトランプ政権を経て増幅され、在韓米軍の削減と役割の変更、駐留費引き上げ要求などとして具体化する。

Q.トランプやその政権が在韓米軍の削減や駐留費問題で他の政権より強硬なのはなぜ?

A.トランプは2016年の最初の大統領選挙の時から米国の海外介入に否定的で、在韓米軍も撤退しうるとの立場だった。その支持層も、米国は自国民の面倒を見ずに海外問題に介入しすぎたとして、トランプを支持している。

 トランプは第1次政権時代にインド太平洋戦略を採択し、同盟国を動員した中国の封鎖と対決を公式化した。全世界の同盟国に防衛費の引き上げと軍事的役割の拡大を要求する一方、米国の直接的な軍事的役割や紛争介入は縮小しようとした。第2次政権ではこのような傾向がさらに強まっている。ヘグセス長官は今年5月2日、米国本土の防衛とインド太平洋地域での中国の抑止、全世界の同盟国とパートナーの費用分担の拡大を優先するとする国防戦略(NDS)ガイドラインを提示した。これは6月24~25日のNATO首脳会議で、NATO加盟国の防衛費を国内総生産(GDP)の5%に引き上げる合意として具体化した。ヘグセス長官は6月1日のアジアの安保会議「シャングリラ会合」と6月18日の上院公聴会で、アジアの同盟国も防衛費を5%に引き上げるべきだと述べている。

 トランプは第1次政権時代の2019年、韓国に、在韓米軍の駐留費である防衛費分担金を従来の5~6倍の年50億ドルに引き上げよという過激な要求をしてきた。トランプは25%の相互関税を課すとする書簡を韓国に発送した翌日の今月8日に、韓国は在韓米軍の駐留費用を「ほとんど支払っていない」、「韓国は軍事費を負担すべきだ」と述べ、圧力をかけはじめた。トランプは、自分は第1次政権時代に韓国に100億ドル払えと要求したと述べてもいる。

 トランプのこうした防衛費分担要求は、現在の米国の国防戦略を設計するコルビー国防次官(政策担当)による在韓米軍の役割変更と連動している。現在のトランプ政権の対外戦略は対中国優先論者が主流で、コルビー次官はその理論的リーダーだ。第1次トランプ政権下でもインド太平洋戦略を公式化した2018年の国防戦略(NDS)の草案を作成した彼は、9月に発表される次の国防戦略も設計している。コルビーは、中国けん制を優先すべきだという前提の下、在韓米軍の役割も北朝鮮の抑止から中国けん制へと変更しようと主張している。

Q.じゃあ、韓国はどうすればいいの? 防衛費分担金も増額して、在韓米軍の役割変更にも同意するしかないの?

A.在韓米軍の削減は長期的には避けられないし、韓国はそれを前提に備える必要がある。米軍にしがみつけばつくほど、米国は韓国に対して防衛費分担金の増額などの要求を増やしてくるし、結局は韓国にとってより負担が重くなるかたちの在韓米軍の役割変更を要求してくるだろう。

 米国は在韓米軍とその基地を中国けん制のためのものへと転換したうえで、台湾をめぐる米国と中国との紛争が起きた時に利用しようとするだろう。韓国内の保守的な親米派は、韓国はそれを受け入れて米国との良好な関係を維持すべきだと主張する。しかし、そのような主張は韓国の交渉力を弱めるし、米国の利益への奉仕を優先するものだ。

 対中国優先論者のコルビー次官は自身の承認に向けた3月4日の上院公聴会で「台湾は米国にとって重要だが、存在論的利益ではない」と述べ、米国が台湾をめぐって中国と戦争するということに懐疑的な見解を示した。コールドウェル報告書も、現在の米国の態勢はあまりにも攻勢志向であり、中国の攻撃を抑止するというより緊張の高まりを誘発していると指摘するとともに、域内の覇権ではなく均衡を目指すべきだと勧告しており、台湾のような小さな島は勢力バランス全体を大きく変えることはできないため、米国が台湾を直接防衛する必要はないと評している。

 米国の本音は、中国との戦争も辞さないということではなく、同盟を中国けん制の前面に立てようということ。だから、韓国が先んじて台湾紛争介入の役割を自任する必要はない。日本の石破首相も米国の防衛費引き上げ要求について、国会で「日本の防衛費は日本が決めるものだ。粗雑な議論をするつもりはない」と述べている。日本は日米2+2(日米安全保障協議委員会)を見送った。米国に最も従順な姿勢を示してきた日本も「No」と言ったのだ。米軍は朝鮮半島において必須不可欠だという認識をまず矯正することこそ、自主国防と実用外交の第一歩となるはずだ。

2025/07/15 09:15
https://japan.hani.co.kr/arti/international/53738.html

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