韓米3500億ドルMOU、安全装置設けたが投資の最終権限は米国に

投稿者: | 2025年11月17日

 韓国と米国政府が14日、関税と安保分野の合意内容を盛り込んだ共同ファクトシート(説明資料)を発表したのに続き、3500億ドル(約54兆円)規模の対米投資を内容とする「韓米戦略的投資に関する了解覚書」(MOU)を締結した。

 キム・ジョングァン産業通商部長官とハーワード・ラトニック米商務長官が署名したMOUを通じて、韓国は米国に現金投資額総額2000億ドルのうち、年間最大200億ドルを超えない範囲で投資することを約束した。韓国の「投資約束」はドナルド・トランプ米大統領の任期が終わる2029年1月までに実施するようにした。すなわち、今後3年余りが残ったトランプ大統領の任期内に最大2000億ドルの投資約束をする一方、年間投資額に限度を設けることで、実際の投資執行はトランプ大統領の任期後にも行われるようにした。

 投資先は米商務長官が委員長である投資委員会が、韓国産業部長官が率いて韓米双方が参加する協議委員会と協議した後に推薦すれば、米国大統領が選ぶようにした。収益配分は韓国側の元利金の回収前までは5対5にし、元利金を回収した後は韓米が1対9に分けることにした。

 MOUには「韓国は米国が投資先を指定して要求した投資金を業務日基準で45日以内に指定された口座にドルで入金しなければならない」と明示された。韓国はこれに従わないこともできるが、(その場合)「米国は大統領が定めた関税率を賦課することができる」と定められている。投資金が入ってこなければ15%の相互関税率、今回の合意によって25%から15%に下がる自動車品目関税率を再び引き上げることができると明示したのだ。

 MOUのこのような骨組みは韓国政府が先月韓米首脳会談直後に交渉が妥結したと明らかにした内容と一致する。

 政府はこれに先立って、米国と日本が投資ファンドに関して締結したMOUに比べ、投資金回収のための安全装置がさらに反映されたと述べた。まず、MOUの第1項に「投資委員会は米国大統領に商業的に合理的だとみられる投資だけを推薦する」と明示し、損害を被る事業に投資する可能性を減らしたと語った。産業部はまた、個別投資プロジェクト別に特殊目的法人(SPV)を構成することにした米日とは異なり、「アンブレラ」(傘)式の特殊目的法人を作り、一方で損失が出れば他のプロジェクトでこれを補填できるようにしたと説明した。これと共に「元利金の償還が難しいとみられる場合、私たち側の収益配分比率を高め償還の可能性を高めることができるようにした」と述べた。

 政府は対米投資に対する物品供給などで韓国企業を優先することにしたという点も強調した。産業部は「韓国企業の対米進出拡大の基盤を作った」とし、「特にプロジェクト推進過程で(米国)連邦土地の賃貸、用水・電力供給、購買契約の斡旋および規制手続き迅速進行など米国側の有・無形的な支援を確保した」と説明した。また「米国が最大限韓国企業を選定し、韓国が推薦する韓国プロジェクトマネージャーを採用するようにし、米国における韓国国企業の事業機会が拡大するものと期待される」と述べた。

 産業部は対米投資ファンド3500億ドルのうち、造船業分野の1500億ドルは韓国企業の直接投資、保証、船舶金融などで構成することで米国と合意したという点を改めて明らかにした。また、1500億ドルの投資については投資主体である韓国企業が米国と収益を分けないと産業部は説明した。造船業分野の投資については、投資収益配分方式が適用されず、発生するすべての収益が韓国企業に帰属するという意味だ。

 産業部のキム・ジョングァン長官はMOUの締結で「韓国の対米輸出および韓国経済の不確実性を緩和した」とし、「商業的合理性を考慮して元金回収の可能性を向上させる装置を設けた」と述べた。また「200億ドルの年間(投資)限度を設定したことが最も大きな成果だと考える」と語った。

 しかし、日本と同様に投資先決定の最終権限はトランプ大統領など米国政府側にあるため、どこまで商業性が保障され、韓国企業の投資にも役立つファンド運用が可能なのかは不確実なものとみられる。韓国は投資先選びに関する「協議」(consult)の対象であり、米国は韓国の同意を求める必要はない。「承認投資」と呼ばれる造船業1500億ドル投資も、残りの2000億ドル投資に比べては韓国側の自律性が保障された方だが、これもやはり米国側が投資先を選ぶことにし、韓国政府には支援義務を賦課している。

 投資金を出さない米国が元利金償還前に収益の半分を持っていくことにしたことと共に、韓国が要求に満たない投資金を出した場合、米国が既存事業で発生した収益をそれだけさらに持っていくことにしたのも、深刻な毒素条項といえる。

2025/11/14 19:44
https://japan.hani.co.kr/arti/economy/54739.html

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