高市早苗首相が「台湾有事の際、自衛隊出動の可能性」に触れたことに対し、中国側の反発が次第に強まっている。中国外交当局は日本政府に連日強く抗議する一方、日本と領有権をめぐって対立している釣魚島(日本名・尖閣列島)で巡察航海を実施し、圧力を加えた。中国が日本への渡航自粛を呼びかけたことを受け、日本では(中国が)「限日令」で報復を始めたという懸念が高まっている。
中国外務省の毛寧報道官は16日、ソーシャルメディア「X」への投稿で、台湾は中国領土の一部だという「一つの中国」原則と中国の立場を日本が理解し尊重するという内容を含む1972年の国交正常化当時に発表した中日共同声明を引用し、「誰が政権を握ろうと、日本は必ず約束を守らなければならない」と主張した。
中国外交当局は7日、高市首相が中国の侵攻による台湾有事は集団自衛権行使があり得る「存立危機事態」に当たる可能性があると発言したことを受け、「一つの中国」原則を損ねる発言だとし、連日強く反発している。
中国外務省は14日、孫偉東外務次官が前日夜、金杉憲治駐中国日本大使と「指示に従って会い」、「高市首相の中国関連の誤った言動について厳正な交渉(外交チャンネルを通じた抗議)を提出した」と明らかにした。また14日、呉江浩駐日本大使も船越健裕外務省事務次官に会い、「高市首相の露骨で挑発的な発言は常識に反しており、中国の『レッドライン』を超える武力脅威だ」とし、高市首相の発言に対する外交的抗議と警告の立場を伝えた。
中国の激しい反発は、中国の習近平国家主席が高市首相の発言を重大事案と捉えていることを示している。
中国官営の「環球時報」は孫偉東外務次官が日本大使を「指示に従って会った」という点を強調し、同指示が習主席によるものであることを暗示した。同紙は「中国外交で極めて珍しい表現で、その厳粛さと権威は特別だ」としたうえで、「ハイレベルの厳正な警告」だと説明した。
日本の読売新聞もこの点に注目し、中国政府関係者の話として「指示に従った面会」は共産党最高指導部が下したものだと報じた。また、中国が強硬な態度を示す背景には、高市首相の発言が日中首脳会談後、日本に比較的融和的な態度を見せた習主席の体面を汚したという判断があると分析した。
中国海警1307艦艇編隊は同日、日本と領有権をめぐり対立している釣魚島で巡察の名目とした航海を行い、日本を圧迫した。
報復措置も本格的に講じられている。中国外務省は14日、「中日間の人的交流の雰囲気が著しく悪化し、中国人の身体・生命の安全に重大な危険が発生した」という立場とともに、中国国民の日本旅行に対する事実上の統制に乗り出した。16日、中国教育部も中国人の治安不安などを理由に日本留学に「注意」を呼びかけた。中国国際航空など6つの中国主要航空会社は自国民がすでに購入した日本行き航空券を取り消しまたは変更する場合、手数料を免除するという方針を公示し、政府方針に歩調を合わせた。このような方針は、日本の観光界に実質的な打撃を与えるものとみられる。日本政府観光局によると、今年1-9月に日本を訪れた中国人は748万人で、国や地域別にみて最も多い。
中国政府の対応が人的交流の遮断に止まらない可能性もあるという見方もある。実際、中国では日本と尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領土紛争があった2012年、深刻な反日ムードと共に、政府レベルの経済報復が行われた。これに伴い、日本の2012年の対中国輸出額が前年に比べ10%以上減るなど、経済被害を受けた。当時、中国は日本へのレアアース輸出を阻止し、打撃を与えた。「中国中央テレビ」(CCTV)系列のソーシャルメディア(微博)アカウント「玉渊谭天」の運営者は15日の投稿で、「日本との経済、外交、軍事などにおける政府間交流の中断」を報復策として提示し、「(日本が)知っておくべきことは、中国が日本最大貿易パートナーであり、少なくない日本商品が中国からの輸入に『高度に依存している』という点」だと強調した。
日本のマスコミは2016年、韓国のTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備後、中国政府が今まで韓国文化コンテンツの中国市場進入を制限するいわゆる「限韓令」を解除しなかった点などに触れ、日本でも似たような状況が続く可能性があるという見方を示している。
日本経済新聞は高市首相発言以後、中日が「経済分野を中心に改善基調だった日中関係が対立に転じつつある」とし、「中国外務省が14日、国民の日本への渡航を自粛するように促すなど実体経済にも波及し始めた。落としどころをどう見いだすのかは高市政権の外交の試金石となる」と指摘した。
日本政府は、中国の動きへの対応は自制している。日本の木原稔官房長官は15日、「日中首脳間で確認した戦略的互恵関係の推進と建設的かつ安定的関係の構築という方向性と相いれない」とし、「適切な対応」を求めた。また、外務省レベルでも中国政府の日本渡航自粛の呼びかけに問題を提起するだけで、対応措置などは発表しなかった。日本では高市首相がすでに「台湾有事は日本の存立危機事態」と発言したため、中国の反発を受け態度を軟化した場合、発足したばかりの政権の「軟弱さ」に映ることを懸念し、進退両難の状況に陥ったという分析もある。
日本の官庁からも批判の声があがっている。 毎日新聞は「日本政府は安全保障環境や経済面での悪影響が大きいだけに、日中関係の急速な悪化は避けたいのが本音」だとし、ある当局者が「日中間の応酬が激化し続ければ、双方の世論も悪化して、悪循環に陥りかねない」と懸念していると報じた。
2025/11/16 20:46
https://japan.hani.co.kr/arti/international/54740.html