K-POPとチャイナマネーの「二つの顔」【朝鮮日報コラム】

投稿者: | 2025年7月21日

 最近、HYBE(ハイブ)、SM・JYP・YGエンターテインメント、CJ ENMなどの大手K-POP関連企業関係者を株式市場の期待株にしている話題と言えば、「チャイナマネーの帰還」だろう。「今年11月に慶尚北道慶州市で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に中国の習近平国家主席が出席したら、限韓令(韓流禁止令)解除宣言が確実に出るだろう」という見方が相次いでいるためだ。HYBEが保有していたSMエンターテインメント株221万2237株(9.38%)を中国の大手情報技術(IT)企業「テンセント(騰訊)」が今年5月に買い、SMの2大株主になったことも期待に火をつけた。資金の流れを重視する市場では、これらのニュースを大きな投資チャンスとして捉えている様子だ。

 だが、現場でK-POPの制作に携わっている人々の本音は複雑だ。チャイナマネーが持つ「二つの顔」を既に経験しているからだ。チャイナマネーのK-POP投資が熱かった2014年は中国資本が大株主になったり、買収した芸能事務所出身の練習生たちが『PRODUCE 101(プロデュース ワンオーワン)』シリーズのような有名オーディション番組に多数出演したりした。しかし、それから2年後に限韓令が韓国を襲い、中国資本は引き潮のように引いていった。中国から投資を受けたK-POP事務所のグループメンバーや練習生、制作スタッフが中国に行く例も多かった。ある大手芸能事務所の関係者は「市場の期待が大きいのにもかかわらず、大手エンターテインメント会社が依然として中国人練習生選抜や中国国内のK-POP公演推進に消極的なのは、そうしたトラウマ(心的外傷)があるからだ」と話す。一部には、「テンセントがSMを牛耳れば、中国資本によるK-POPコンテンツの蚕食が始まるだろう」という懸念もある。テンセントはSMの筆頭株主であるカカオエンターテインメント株(4.61%)を持っている上、今年初めからカカオのSM売却説が飛び交っているためだ。

 そうした中、K-POPが限韓令解除に神経をすり減らす必要がなくなってきているのも事実だ。中国以外にも広くて多様な市場が形成されつつあるからだ。韓国関税庁のK-POPアルバム輸出国統計を見ると、中国の購買量は昨年3位と依然として高いが、日本と米国がその数字を上回っている。 一方、チャイナマネーにとってはK-POPに回帰するべき誘因が大きくなっている。中国では昨年、K-POPアーティストの進出が阻止されている中、中国人歌手がK-POPを歌う偽K-POP公演や偽K-POPフォトカードの違法販売が横行した。ある中小芸能事務所の関係者は「中国人投資者たちの間では、『K-POPのノウハウを習得し、米国に劣らないアジア音楽市場そのものを育成すれば、中国にとっても得だ』という認識が広がっている」と語った。

 李在明(イ・ジェミョン)政権発足後、官主導の限韓令解除が韓中関係改善の呼び水と同一視されるムードが広がっている。しかし、実際に限韓令が解除された時、本当にバラ色の未来が待っているかどうかは細かくチェックしなければならない。K-POPは一見、サイクルの速い流行を追っているように見えるが、次世代のBTS(防弾少年団)やBLACKPINK(ブラックピンク)を輩出し続けるには、長期間にわたる安定した投資が必須だ。認知度はあっても資本力は弱い芸能事務所が多いこともK-POP産業の弱点だ。突然の政治的要因が発生したり、K-POPのノウハウを十分に習得したりしたとしても、果たしてチャイナマネーは投資を続けるのだろうか? 2016年に中国市場に過度に依存し、自ら招いた端境期を思い出しつつ、深く考えるべき問題だ。

ユン・スジョン記者

2025/07/21 07:00
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2025/07/14/2025071480012.html

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